市民後見事業の意義を再確認『百日草 No.31』

成年後見制度の一つに「任意後見」があります。独居の高齢者などが、将来判断能力が低下しても生活が成り立つよう、元気なうちに「後見を任せたい内容」を公正証書により定め、契約するものです。

この任意後見について、国は弁護士などの専門職後見人だけではなく、市民が参加して担う「市民後見」を推進しようとしていますが、なかなか浸透していません。はせさんずは、2012(平成24)年に市民後見事務所を立ち上げ、現在、複数の任意後見契約を結んでいます。区民向けの市民後見講座も開催してきました。

はせさんずでは、任意後見契約と同時に見守り契約についても公正証書を作成し、定期的に訪問して生活状況や健康状態、本人の思いを把握します。そして、ときに、どんな介護サービスを望むかあるいは望まないか、ケアマネジャーと話したり、治療方針について医師の考えを確認したり、本人の意恨に基づくきめ細かなサポートをしています。

一方、3年前から、「居住支援」として住宅確保要配慮者の賃貸住宅入居のお手伝いをしています。本人だけで不動産屋を回っても物件を紹介してもらえないことも多いなか、制度を知る者が同行し交渉することで、契約に至っています。一昨年からは、緊急連絡先がなく契約できない人のために緊急連絡先になるサービスを始めました。利用者は現在20数名になっており、他区から相談の電話が入ることもあります。

これまで遭遇したケースには、たとえば、物件が見つからずホテル住まいを続けていた車椅子利用の障害者が、公的サービスやリハビリが受けられず、きちんとした食事もとれず糖尿病が悪化して、身体機能の低下で死亡といった例や、かといえば、生活保護は出ても住宅が探せず、手持ち資金もなくなって、もう羽田空港で寝るしかないという状況で、同行者がねばって交渉したところ、なんとか公共施設利用にこぎつけた、その後アパートが借りられた、といった例もあります。身寄りもなく一人暮らしの人で、「自分の納骨はおまわりさんに頼んである」などと話す人にも出会いました。

こうした活動を通して思うのは、困難者個々の今後の生活を一緒に考え、適切な交渉や手続きを支援していく、「伴走型」の市民後見が必要ではないかということです。利用者は、自身の状況に応じたていねいなサポートを受けることで、きっと安心して暮らすことができます。はせさんずは、今後も市民後見事業を継続し、後見人養成にも引き続き取り組み、困難を抱える人が安心して生活できるようにしていきたいと思います。

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たすけあい大田はせさんず